鈴木 宏典 教授
研究室紹介
人の移動、物の運搬…おそらくこれは人類が誕生して以降、わたしたちが社会生活を営む上で必要不可欠な存在になっています。まだ交通機関が十分発達していない時代から、人々は努力を重ね、より便利で快適な、かつ速達性の高い交通を目指してきました。現在では、自動車の自動運転も現実化しつつあるなど、近年のITやIoT技術によりめざましい発展が遂げられています。しかしその一方で、まだ解決されない問題や、これまでとは違う新たな問題が生じていることも事実です。本研究室では、交通の中でも特に自動車に着目し、ドライバに働きかけて、自動車の安全運転を支援する技術開発に取り組んでいます。IoTの時代、自動車も含めて様々なモノがインターネットにつながり、ビッグデータと呼ばれる膨大なデータ取得が可能になっています。これを知能化技術によって処理して、ドライバにとって有益な情報に加工し、これを適切に提供することで事故を未然に防ぐことが主な研究テーマです。ドライビングシミュレータ、トラフィックシミュレータ及び、AIに代表される各種数学的なアルゴリズムや知能処理技術を活用して研究活動に取り組んでいます。

ドライビングシミュレータを活用した運転支援システムの開発
主な研究紹介
先行車の減速意図を伝達する運転支援システムの開発
先行車の減速はブレーキランプでしか認識することができません。しかし、ブレーキランプが点灯するよりも前にドライバの減速意図を検知し、これを後続車に伝達することができれば、追突事故を未然に防げる可能性があります。この研究では、先行車がいつ減速をするのか、カルマンフィルタの一種を使ってドライバの意図を予め予測し、これを後続車に伝達する運転支援を考えました。実際にブレーキを踏む1.5秒前に、ウインドシールドディスプレイを用いて減速度合いが3色に分けて表示されます。この運転支援システムを用いると、追突のリスクが大幅に低減されることが明らかになりました。

先行車の減速の強さに応じて、3色のバーがピラーから呈示されます。
無駄な加減速を抑制する運転支援システムの開発
信号交差点を通過する際、不必要な加減速を繰り返すと渋滞が発生し、さらに渋滞の解消も遅れてしまうことがあります。この研究では、ショックウェーブという理論を用いて、なるべく無駄な加減速をせずに交差点を通過するための運転支援を考えました。青信号になる前にスピードを落とすことで、交差点手前で停止と加速をしなくても交差点を通過できるものです。この運転支援システムを用いると、渋滞の形成がなくなり、燃費の向上や排ガスの抑制されることが明らかになりました。

推奨走行速度(この場合40 km/h)が呈示され,これに従って運転することで無駄な加減速を必要とせずに信号交差点を通過することが可能になります.