先端材料工学研究室

安原 鋭幸 教授

研究室紹介

ロボットは動き方や制御方法などが注目されがちですが、開発においては機械、電気、制御、情報などさまざまな分野の技術が必要であることは良く知られています。実際に設計する段階で材料の選定が必要になり、作製する段階では材料の加工も必要になります。

今後、ロボットに対する要求が多様化するにつれて、軽量、高剛性、高強度の材料が求められます.そこで、より多くの材料に関する知識およびそれらの特性の知見はロボットの活躍の場を拡げることに役立ちます。

本研究室では、機械的な応用をはじめとする、さまざまな材料の特性向上に関する研究を行っています。天然繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)などの繊維状フィラーとプラスチックとの複合材料を取り扱い、材料特性の評価や加工法までを対象にしています。CNTの研究においては、CNT自体の合成から複合材料などの応用まで一貫して特性評価を行い、熱、電気、機械的特性に優れた材料の開発を目指しています。

毎年恒例の研究室山行@蓼科山山頂

主な研究紹介

異種材料接合

自動車・航空機などの移動体は軽量化が喫緊の課題となっています。最近、航空機ではアルミニウム系の材料に換わって炭素繊維複合材料(CFRP)の使用率が高くなっています。しかし、使用する部品全てをCFRPにするのは難しく、各所で適した材料が使われます。このマルチマテリアル化に必要となるのが、異種材料の接合技術です。一般的には、接着剤やリベットを用いますが、本研究室では材料同士を直接接合することを試みています。現在、高周波誘導加熱を利用して熱可塑性プラスチックが母材として使われているCFRTPシートとアルミニウム板を直接接合する方法を研究しています。この方法では炭素繊維を直接加熱するため、全体的に温度が上がることと、母材のプラスチックの変形を抑えることができます。さらに、再度加熱することで、簡単に分離することも可能です。

高周波誘導加熱援用CFRTP-アルミニウム板接合装置 接合された炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)シートとアルミニウム板

ナノ繊維複合材料

カーボンナノチューブ(CNT)は、比重は1/5程度と非常に軽量でありながら、鉄鋼材料の約10倍のヤング率、強度を有するとされる材料です。さらに導電性も良好で、熱伝導率は物質中で最高と言われています。このCNTを従来の炭素繊維の代替材料として用いることで、より高性能な複合材料を創り出すことが期待されています。本研究室では、CVD法を用いて従来のものよりも長尺の垂直配向CNTを合成して、それをプラスチック材料と複合化することで、より特性の高い複合材料を開発します。配向したCNTをそのままプラスチックに埋め込むことで特性の向上を試みます。

合成されたCNTの透過型電子顕微鏡写真(直径約10nm)

合成された垂直配向CNT(長さ約600µm)